54話 歪んだ愛が招くもの
「ほどいてやってくれる?」
クマの手で、ヒスイを指す司書代理。
「そしたら質問に答えてやるよ」
するとマーキュリーは。
「ほどく?それなら結構です」
司書代理の申し出を、躊躇なく断った。
「徹底してんな〜・・・んで、ヒスイをどうしたい訳?」
「別に、どうにも」
「・・・ま、いいけどさ。たぶんアレじゃイケないから、熱出す前になんとかしてやれよ?」
司書代理が姿を消し。本の中の監獄は静寂を取り戻した。
聞こえてくるのは、ヒスイの悩ましげな息遣いだけ。
「・・・お手伝いしましょうか?」
と、ベッドに片膝を乗せるマーキュリー。
ヒスイの返事を待たず、枕に埋まった顎を掴んで。
「ふぁ・・・おにぃ・・・んむッ!!」
少々強引に持ち上げ、その口に指を入れた。
「ほ・・・にぃ・・・ひゃ・・・」
「“お兄ちゃん”、それしか言えないんですか?困ったひとですね」
一度は理性を取り戻したヒスイだったが・・・両手を拘束され、ひとり腰を振っているうちに、コハクのことしか考えられなくなり。吸血直後に逆戻りだ。
口に入れられたものの区別すらできない状態になっていた。
揃えられた人差し指と中指をたっぷりと咥え。
指と指の僅かな隙間に舌を這わせて、いやらしく先を吸う。
「ん・・・ふ・・・ほにぃちゃ・・・」
「・・・・・・」
(馬鹿みたいだ。こんなことしたって・・・)
嫉妬心が募るだけなのに。
マーキュリーは、溜息ひとつ。
「あとは好きに想像してください」と、告げ。
顎を掴んだまま、ヒスイの口に何度も指を入れた。
にゅぷッ!ぬちゅ!ぬちゅ!ぬちゅッ!
「あ・・・う・・・うぁ・・・」
舌を擦られたヒスイは唾液を溢れさせ。間もなく・・・絶頂。
「あ・・・あ・・・ふぁ・・・」
「ん・・・ほにぃ・・・ちゃ・・・?」
マーキュリーはヒスイの口から指を抜き。縄を解いた。
「・・・顔、洗ってきた方がいいですよ」
こちら、モルダバイト西の砂漠。
イフリートの引き上げ作業が続く一方で。
コハクとセレが話をしていた。トパーズとアイボリーもいる。
「じゃあ、僕はこれで」
と、コハク。ヒスイを追うつもりなのだ。
“向こう側”と呼ばれる場所は、魔界の一角に過ぎず、召喚士に頼らずとも、行く手立てはある。
ところがそこで。
「君には残って貰わないと困るのだがね」
セレがコハクを引き止める。
「こちらも邪魔をされると困るんです。どんな理由があるにせよ、ね」
両者、微笑んではいるが・・・
(なんか怖ぇぇぇ!!!)
アイボリー、心の声。
「何を企んでるか、聞くまでもない」
煙草を咥え、トパーズもまた笑う。ただしこちらは皮肉笑いだ。
それから、こう明かした。
「リヴァイアサンを“向こう側”で片付けさせる気だ」
「!!“向こう側”って、ヒスイもまーもいるじゃんか!!」
「だからだ」
と、トパーズが話を続ける。
「リヴァイアサンには、好物がある ―『嫉妬』だ」
「!!それやべぇって!!まーが・・・」
「ヒスイといる限り、リヴァイアサンを呼び寄せる。つまり、そういうことだ」
「まーが囮になるってことかよ!?」
察しがいいね、と、セレが答える。
「その通りだよ。このまま便乗するつもりだ。“向こう側”の戦力は、充分足りていると判断したのでね」
「・・・総帥は敵なの?味方なの?」
アイボリーが、セレにそう尋ねると。
「恐らく今は、敵だろうね」