56話 蜜標
こちら、人間界。
オニキスがもたらしたヒスイ情報は、当然、コハクの耳にも入ることになった。
トパーズ、アイボリー、オニキスの元に、コハクとセレが戻り。
男、5人。誰が下着を届けるかで、再びモメる・・・
「そんなの決まってる」と、コハク。
「ヒスイの予備下着を持っているのは、僕だけだ」
堂々と、そう言い切る。ある意味、尤もだ。
「だったらそれ、よこせ!」
コハクに食ってかかるアイボリー。
ヒスイの下着=“向こう側への切符”と、錯覚してしまっているようだ。
「ヒスイもだけどさ、まーも心配なんだよ。メンタルケアしてやんねぇと・・・なんか、ヤバイ予感すんだって!!」
訴える相手を父親から兄へと変え。
「なあ、双子のトパーズならわかんだろ!?この感じ・・・」
「知るか」
トパーズは煙草の煙を吹きかけ、アイボリーを追い払った。
・・・と、その時。
「竜だ!!」エクソシストのひとりが叫び。緊張が走る。
太陽の光を遮り、突如、上空に現れた竜は、アイボリーを狙い直下降してきた。
「!!!」
襟首を咥えられたかと思うと、一気に引き上げられ、アイボリーの足が砂地から離れる。
「うわぁっ・・・」
「って、おい!!誰か助けろよ!!」
唯一、オニキスだけが剣を抜いていた・・・が、トパーズが制止する。
「その竜は、指名手配のレム君だよ。気を付けていっておいで」
コハクは笑顔で手を振り。
「気を付けるも何も・・・誘拐されかけてんだけど!!俺!!」
叫んだところで、無駄だった・・・
「何事も経験だ。健闘を祈るよ」と、セレまで、快く送り出す始末。
極め付けは・・・
「うるさいのがいなくなって丁度いい」という、トパーズの発言。
「帰ったら覚えてろよぉぉ!!!クソ大人どもぉぉぉ!!!」
こうして、アイボリーは竜に連れられ、空の彼方へと消えていった・・・
「さて、話を戻しましょうか」
改めて、セレと向き合うコハク。
「と、言っても、話し合いで解決できるとは思えないので・・・」
横目でトパーズを見て。
「アレ、貸してくれない?」
すると、トパーズは鼻で笑い、あるものをコハクに投げ渡した。
「ありがとう」
受け取ったのは・・・手錠。神トパーズの所有物だけあって、特殊なものだ。
熾天使だろうと、悪魔喰いだろうと、簡単には外せない。
コハクはまず、自身の左手首にそれを嵌め。
もう一方を、セレの右手首に嵌めた。
「おや、どういうことかね?これは」と、セレ。
いきなり手錠をされても、取り乱す様子はない。
「要は、離れなければいい訳ですよね?」
コハクはにっこり微笑んでから、少々乱暴に、繋がったセレの腕を引っ張った。
「僕は、ヒスイのところへ行く。貴方がここに残るというのなら ―」
「あとは、力比べだ 」
・・・そして、こちら。監獄では。
※性描写カット
夢なら早く、覚めればいいのに。