World Joker/Side-B

57話 淫夢



「あッ・・・あんッ!あんッ!!あうんッ!!!」

ヒスイは、両手で鉄格子に掴まって立ち。



※性描写カット



「あふぁ・・・ぁ・・・」

ヒスイは目も口も半開きにして、幸せそうに笑っていた。

「・・・・・・」
(こんなことで・・・)

嫉妬する方がおかしのだと、わかっている。
しかしそれは、恋愛感情がある限り、付き纏うもので。
性的興奮さえも上回る。
気が付くと、ヒスイの背後に立っていた。
両腕を胴体に回し、鉄格子から引き離す・・・

「あッ・・・んん〜・・・」



※性描写カット



「あ・・・あ・・・おにぃちゃ・・・ぁ・・・」
「・・・そんなに好きなんですか?」

「お父さんとするセックスが」
 
 

そう言って、無理矢理唇を奪った瞬間。

「― くしゅんっ!!」

ヒスイのくしゃみが、マーキュリーを現実に引き戻した。

「あ、ごめん。起こしちゃった?」

と、鼻を啜るヒスイ。
夢の中の艶めかしさはどこへやら、だ。

「・・・・・・」
(やっぱり夢か・・・)

鉄格子の向こうには、誰もいない。
本の中の監獄は、2人きりの空間のままだ。
珍しいことに、ヒスイの目は冴えていて。
マーキュリーだけが眠っていたようだ。
 

「・・・・・・」

しばらくの沈黙のあと、マーキュリーは不意にこう尋ねた。

「お母さんは・・・銀の男の習性を、知っていますか?」
「え?何、突然・・・へくしゅっ!!」

先日、トパーズから恋愛確率について聞かされたばかりだ。

「私は、それが絶対だとは思ってないよ。現にまーくんはセレと付きあっ・・・」

そこで、ヒスイの言葉が途切れる。
マーキュリーの手に、口を塞がれたのだ。
背中合わせから体勢を変え。背中から抱きしめられている。
ヒスイの話を聞く気はないようで、口から手を離す気配はない。
マーキュリーはヒスイの耳元に唇を寄せ。

「残念ですが・・・僕も、トパーズ兄さんやジスト兄さんと同じ“体質”みたいです。この意味、わかりますか?」

そう、囁くと。ヒスイの体が僅かに縮こまった。どうやら、理解しているようだ。

「あなたが悪いわけじゃない。ただ・・・一生童貞というのも嫌なので」

「一晩だけ、お相手願えますか?お母さん」
「え・・・?」

解放されたヒスイの口からは、それ以上何も出なかった。
マーキュリーは瞳を伏せて笑い。

「冗談ですよ」
「え?え?」
(どこからどこまで???)

ヒスイは目をぱちくりさせながら。

「まーくんって、もしかして結構、意地悪???」
「相手によります」

笑顔のまま答えるマーキュリー。それから一言。

「怖い、ですか?」
「ふぇっ?何が???」
「あなたと同じ髪の色をした ― 息子が」
「そんなことあるわけ・・・」

ヒスイの話半ばで、マーキュリーは急に話題を変えた。

「体、冷えてますね。しばらくこのままでいましょうか」
「あ・・・うん・・・」
(あれ?なんか・・・私・・・震えてる???)

マーキュリーの腕の中。寒さで、とは、少し違う気がする。
しかしそこは、やっぱりヒスイで。
自分が追い詰められていることに、気付かない。

(体の芯が冷えたのね!きっと!パンツがあれば、こんな震えなんてすぐに止まるはず!!だけど・・・)

「・・・パンツ、まだかな」


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