World Joker

番外編 三部作/サイドストーリー

ハートスロット

アクア、プレナ、ヒスイ、クリス他

スパイシーチョコレートパニックより。アクアとプレナ。


エクソシスト教会内、廊下にて。


「ちょい待ち〜、そこのオカッパぁ」


アクアが呼び止めたのは、食堂勤務エクソシストのプレナ。
ちょうど休憩に入ったところだった。
トレードマークの三角巾を外し、振り返る。その目つきはすこぶる悪い。
「タレ乳女、何か用か」
「はい、これぇ、あげる〜」
笑顔でアクアが差し出したのは・・・綺麗にラッピングされたう○こチョコだ。
「何だ、これは」
「“友チョコ”だよぉ〜」
「友チョコ・・・」
友達にプレゼントするチョコレートを、友チョコと呼ぶが、プレナは知らなかった。
嬉しくも何ともないという顔で友チョコを見ている。
「ママとぉ〜、一緒に作ったんだよぉ〜」
「ヒスイと・・・」
ヒスイの名が出ると、プレナの態度はいくらか柔らかくなった。
貰ってやってもいい、と。プレナが友チョコを受け取る。
「食べてみてぇ〜、見た目はう○こだけど〜、オトナ風味で美味しいから〜」
そうアクアが急かす。内心、ほくそ笑んで。
ヒスイを巡り、プレナとは対立関係にあるアクア。⇒カップル絵巻No.41参照
ちょっとした嫌がらせに、失敗作を持ってきた――つもりだった。

しかし、逆なのだ。

「ど〜お〜?」
プレナが、辛さに悶絶する姿を期待していたのだが・・・
「普通にうまい」
「え〜???そんなハズないんだけどぉ〜」
首を傾げるアクア。
成功作と失敗作が入れ替わっているとは思いもしない。
早々に、プレナ=味オンチという結論を出し。
「ま、いっか〜、じゃね〜」と、去っていった。
「・・・・・・」(友チョコ・・・)
プレナは成功作のチョコレートをもう一個口へと運び。
「来年はヒスイに“友チョコ”する」
無表情のまま、新たな野望(?)を抱くのであった――





マーメイドラブより。ヒスイとクリス。


「あれ?クリス?」
「ヒスイ・・・さん」
夕方の図書館――返却ボックスの前で、偶然鉢合わせになる二人。
ヒスイも本を抱えている。返却をしにきたのだ。
数メートルほど後方には、コハクが立っていた。
唇の腫れも引き、極上の美形に戻っている。
「あれ?目赤いよ?どうかした?」と、ヒスイ。
クリスは、人見知りのヒスイでも話せる相手だ。
クリスの母、ジョールに揃いの服を着せられたりと、時として、姉妹のように扱われていただけある。
「告白して・・・ふられました・・・」
誰に、とは言わずに、クリスが答えた。
「え・・・」
ヒスイは少しの間、次の言葉に迷っていたが。
「クリスは、ジョール似ね」と、言った。
「私が・・・母似・・・ですか・・・」
驚いた表情でクリスが聞き返す。
うん、と、ヒスイは頷き。話を続けた。
「ジョールって、あれでいて案外思い切りがいいのよね。要は、勇気があるの。娘のあなたもそうなんじゃない?」
モルダバイト城で、メイド長を務めるジョールを、娘のクリスも誇りに思っていた。
似ていると言われれば・・・嬉しい。
「ありがとう・・・ございます」


こうして二人は別れ――こちら、ヒスイ。
「・・・・・・」(告白って、ホントに勇気がいるわよね・・・)
ヒスイの場合、両想いでも、なかなか口にできない。
(えっちの時に言ってる“好き”も嘘じゃないけど・・・)
それを除けば、最近ちゃんと言っていない気がした。
けれども、改めて言おうとすると、ひどく恥ずかしく。
チラリ、コハクを盗み見るも。
「ん?」
すぐに気付かれ。
「な、なんでもない・・・」
慌てて目を逸らすヒスイ。


「あ・・・」「えと・・・」「うー・・・」


ヒスイの目線は上へ行ったり、右へ行ったり、左へ行ったり・・・ソワソワと落ち着かない。
するとコハクが。
ヒスイを覗き込み、少し長めのキスをした。
それから・・・
「好きだよ、ヒスイ」
ヒスイの口元で囁く。ところが。
キスを終えたヒスイの唇は尖っていた。拗ねているのだ。
「・・・お兄ちゃん」
「うん?」
「私が言いやすいように、先に言ったでしょ?」
「バレた?」
「っ〜!!」
ヒスイは告白前から真っ赤になって。照れ隠しに、怒りながら。
「お兄ちゃんのバカぁっ!!」


「・・・大好きっ!!」





最後に・・・ジスト。

自室のベッドに寝転がり、アクアがモデルを務める雑誌を熱心に読んでいる。
今号はバレンタイン特集が組まれていて。
そこには、『甘さのなか、ほのかにピリッとする、大人のチョコレート』が今年のトレンドとされていた。
「ヒスイ、これ作ろうとしたのかな?」
ただただ辛いだけのチョコレートだったが、ヒスイの気持ちは汲み取れた。
「へ〜・・・友チョコ・・・逆チョコ・・・色々ある・・・」
次にジストの目を惹いたのは、逆チョコの記事。
逆チョコとは・・・
男性が女性に贈るチョコレートのことだ。
「そうだっ!」
ジストが誌面から顔を上げる。
(今年は色々あったけど・・・)


来年は、オレがチョコレートを用意して。
ヒスイに、「好き」って言おう――


+++END+++

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