後日談
愛猫男子×2
1ヶ月が過ぎた、日曜日の朝。
こちら3階建ての家。住人=トパーズ、ジスト、メノウ。
男3人の朝の風景・・・
トパーズはYシャツにネクタイ。仕事モードだ。新聞を読みながら、涼しい顔でコーヒーを飲んでいる。
メノウは欠伸をしつつ・・・コーヒーカップに何個も角砂糖を落とした。
食卓に立ち昇るコーヒーの香り・・・そこに紅茶の香りが混ざる。
本日オフのジストは、ヒスイを偲んでひとりミルクティを飲んでいた。
頭にエロ本をのせている。詳しくは・・・帽子さながらにハの字に被っているのだ。
横にも何冊か積んであった。男所帯なので、気兼ねなくエロ本を広げられる。
「なんだよ」と、笑うメノウ。
「ロリもんと人妻もんばっかじゃん」
そこでメノウの悪戯心が疼き。トパーズの手元にある新聞とエロ本をすり替えた。
「・・・・・・」
黙ってページを捲るトパーズ。その表情は新聞を読んでいる時と全く変わらない。
「男なんだからさ〜、もうちょっと嬉しそうな顔しろよ。お前、こういうの見てなんも感じないワケ?」
「これは、性の知識を得るための、大人用の教科書に過ぎない」
トパーズはそう言ってまたページを捲った。
「へ〜・・・“大人用の教科書”ねぇ。物は言いようだよな」
メノウが苦笑いする傍ら、ジストは真面目な顔で言った。
「やっぱオレ・・・」
ヒスイにしか勃たない。
「・・・みたい」
家を出てからあれこれ試してみたが、ヒスイでないとイケないことを立証してしまった。
(やばい・・・もうオレ病的にヒスイのこと好きかも・・・)
「はぁ・・・」恋煩いは日に日に悪化。
ジストは熱っぽい息を吐き、エロ本を頭にのせたまま机に突っ伏した。
それから上目遣いでトパーズを見ると。
「もしかして・・・兄ちゃんも?」
「それがどうした」トパーズは全く動揺せず、堂々と答えた。
「おいおい、それマジ?“銀”の男の体質的な問題ってコト?」
聞き捨てならないとばかりに、メノウが割り込む。
「違う」「違うよっ!」
トパーズもジストも否定したが・・・
「・・・・・・」メノウは当然勘付く。
「・・・それさ、ヒスイに言ってみれば?ヤらしてくれるかもよ?」
「それでヤれるもんなら、とっくにヤってる」
「じいちゃんも兄ちゃんも何言ってんだよっ!そんなの卑怯・・・」
むぎゅ!そこでトパーズに鼻を摘まれるジスト。
「バカめ」と、トパーズは席を立ち。
「綺麗事ばかりで恋愛ができると思うな。ガキが」
クールにそう吐き捨て、休日出勤していった。
今度はこちら。赤い屋根の屋敷。
洗濯物を干すコハクの後ろ姿を眺めているヒスイ。
コハクの金髪が太陽の光に透けるのを見るのが好きなのだ。
いつもと変わらぬ日曜日の光景・・・だが。
息子達がいなくなって1ヶ月。その間顔も見ていなければ、声も聞いていない。
「どうしてるかな、二人とも」
ヒスイが何気なくそう口にした時だった。
「母上!元気だったか!」猫シトリンが現れ。
「兄上のところに遊びに行こう!」と、ヒスイを誘った。
「え・・・でも・・・」
親離れ子離れしようとしている矢先のことだけに、ヒスイは渋り。
しかし、息子達の暮らしぶりが気にならないと言えば嘘になる。
「なに、そういうことなら心配するな」と、シトリン。
ぼんっ!と一旦人型に化け、ヒスイの両肩を掴んで言った。
「私にいい考えがある」
母上、猫になれ!!
「はぁっ???猫???」
猫の姿でこっそり覗く分にはいいだろうと、シトリンの強い勧めで。
「変身魔法ってあんまり使ったことないんだけど・・・確かお父さんの部屋に・・・」
そんな魔導書があった気がする。
2階のメノウの部屋まで行くと、すぐにそれは見つかり。
シトリンに急かされながら、呪文を唱える・・・
「おお!!」
シトリンが感動の声をあげた。
ヒスイは銀毛の子猫となって。パッチリした瞳はそのまま翡翠色。
成猫に比べれば、ひとまわりもふたまわりも小さいが、猫には違いない。
「可愛いぞ!!母上!!」
シトリン、大興奮。いつもと逆に、人型のシトリンが猫型のヒスイを抱き上げた。
あまりの愛らしさに頬ずりが止まらない。
ミャアミャア、ヒスイが苦しそうに鳴いた。
「さあ行くぞ!母上!!」
ぼんっ!シトリンも猫の姿に戻り、早速ヒスイを屋敷から連れ出した。
「あ、でもお兄ちゃんに・・・」
出掛ける時は、外出許可がいるのだとヒスイが立ち止まる。
(相変わらず過保護だな・・・)
シトリンは、庭にいるコハクに声をかけた。
「おぉい!!母上を借りるぞ〜!!!」
「気をつけていっておいで。危ない遊びはしないようにね」
コハクは笑顔で手を振った。即ち、外出許可。
独占欲の強いコハクでも、自分と同じ顔をした娘シトリンには、割と気前良くヒスイを貸し出すのだ。
そして・・・離島コスモクロア。3階建ての家にて。
若草色のクッションが目印となり、ジストの部屋は簡単に見つけることができた。
まずはそこから〜と、忍び込むシトリン&ヒスイ。
2匹の猫がベッドの下に隠れるとすぐ、ジストが部屋に戻ってきた。
1ヶ月ぶりの再会・・・心なしか大人っぽくなったように見える。
「はぁ・・・」
ジストはどこか悩まし気な様子で。クッションに顔を埋めた。
「どうしたんだ?あいつ」※猫語のシトリン。
「さぁ?でもちょっと元気ないみたい」※同じく猫語のヒスイ。
心配そうに見守る猫達・・・しばらくすると。
「はぁ・・・」ジストの桃色吐息が聞こえた。
「ヒスイ・・・」と、小さな声で呟いて。股間に手を伸ばし、もぞもぞ・・・
クッションの脇には、ボックスティッシュとなぜかコンドーム。
この流れは・・・ひとりエッチだ。
ヒスイの匂いが滲み込んだクッションは、ジストにとってヒスイそのもので。今や絶好のオカズとなっていた。
「ヒスイ・・・好き」
クッションの匂いをクンクン嗅ぎながら、片手でペニスを擦るジスト。
完全勃起したらすぐ、コンドームの袋を口に咥え封を切った。
薄いゴム膜をペニスに被せる・・・慣れているのか、その姿には余裕がある。
ひとりエッチでわざわざコンドームを使うのは、射精で大事なクッションを汚さないための配慮だ。
ジストは両手でペニスを握った。
「は・・・はぁ・・・ヒス・・・」
架空のヒスイと熱く交わる・・・ヒスイ本人と姉が見ていることには気付いていない。
(ちよっ・・・!!何やって・・・)
ヒスイは激しく狼狽していた。
息子のオカズになるくらい〜と思っていたが、この場面では話は別だ。
娘の前で。息子のオカズにされる恥ずかしさと言ったら。猫ながら、紅潮する。
(なんで!?なんでこうなるの!?)
「・・・・・・」こちら、シトリン。
来て早々、男の生々しい一面を見てしまった。
(何というか・・・綺麗な顔をしているだけに、残念でならん)
昔も今も、ジストは優しい顔立ちの好青年だ。はっきり言って、モテる。
「その気になれば、いくらでも相手を選べるだろうに・・・母上でないとその気になれんとは・・・くッ!!!」
(不憫すぎて泣けてくるぞ!!弟よ!!)
姉シトリンは弟ジストのひとりエッチに深い同情の意を示し。
ヒスイはパニックで、訳がわからなくなっている。
一方ジストは・・・
「んっ・・・ヒスイぃ〜・・・」
ヒスイの名を呼びながら、勢い良く射精した。
ゴムの先端にはたっぷりと精液が溜まり。その重さで垂れ下がっている。
中味をこぼさないよう注意しながらゴムを抜き、口を結ぼうとした・・・その時。
にやぁぁぁぁっ!!!
ヒスイがジストに向け突進していった。
止めるつもりで飛びだしたのだが、明らかにもう遅い。
「わっ!!なにっ!?子猫っ!!?」驚いたのはジストで。
精液入りのコンドームを落としてしまった。
よりによって、ヒスイの頭の上に。
ばしゃっ!それはヒスイの脳天に直撃し。
ぽたぽた・・・温かく白いものが、頭から顔へ垂れてくる。
子猫の小さな体は、あっという間にジストの精液まみれとなった。
「・・・・・・」ヒスイは言葉を失い。呆然としている。
「のぁっ!!!」シトリンもビックリだ。
(は・・・母上ぇぇぇ!!!!)
「ごめん・・・っ!今洗ってやるからなっ!!」
ジストは慌ててヒスイを抱き上げ、バスルームへ向かった。
シャワーの蛇口を捻り、お湯をぬるめの温度に設定。手際良く、汚れたヒスイの体を洗い始めた。
(母上・・・無事か!?)
猫の面が割れているだけに、出るに出られないシトリン。
バスルームの前をうろうろしている。
引き続き、こちらジスト&ヒスイ。
シャンプーが済んだヒスイにドライヤーの風をあてるジスト。
べっとりしていた銀毛が、見事ふわふわになった。
ヒスイの機嫌も直ったようで、尻尾を揺らしながら大人しくしている。
「ホントにごめんな〜・・・」
バタバタが治まって。改めて子猫を見ると。
「・・・・・・」
(わ・・・可愛い・・・)
なぜか胸がキュンとする。
「・・・なんかヒスイみたい」
ジストの場合、“可愛い生き物”はすべてヒスイに見える。
「あの・・・さ」と、ジスト。
「オレの猫にならない?」
「絶対幸せにするから・・・オレと一緒に暮らそ?」
まるでプロポーズだ。鼻先と鼻先をくっつけ、熱心に口説く。
にゃにゃにゃ!!! 訳:ムリムリムリ!!!
ヒスイが身振り手振りで拒否するも。
“空気が読めない”体質は遺伝しているようで、ジストには伝わらない。
そんなに喜んでくれるなんてっ!と、罪なき笑顔で。
「ちょっと待ってて!今ミルク用意するからっ!」
ヒスイをリビングの床に離し、ジストはキッチンに向かった。
この隙に、と。逃げ道を探すヒスイだったが・・・
「!?」(トパーズ!?)
トパーズが午前の仕事を終え、戻ってきたのだ。ばったり、廊下で出会う。
「・・・・・・」(何しに来た・・・)
教育実習生の指導のため、学校に顔を出し。午後からは、移住者説明会で壇上に上る予定になっているトパーズ。
途中、家に寄ったのが幸いだった。
その猫がヒスイであることは一目でわかった。
(何にせよ好都合だ)
腕時計を見るトパーズ・・・次の仕事まで少し時間があるのを確認すると、ニヤリ、口元を歪ませ。
「にゃっ?」
子猫ヒスイの首の後ろを摘んで、自室に連れ込んだ。
キングサイズのベッドの上にヒスイを落とし。自分も横になる。ぎしっ・・・軽く軋む音がした。
(トパーズ・・・疲れてるみたい)
ヒスイがじっと見ていると。
トパーズはネクタイを緩めながら、くいくい指を曲げヒスイを呼んだ。
そして、一言。
「慰めろ」
「にぁ〜っ・・・」
言われたヒスイが指を舐める。するとその指が喉元を撫で。
それはとても優しい愛撫だった。
(トパーズって猫好きだったっけ???)と、思いながら。
ひとときの猫的快感に浸るヒスイ。ところが。
突然上から押さえつけられたかと思うと、ちゅっ。
「にゃっ???」
(?今なんかお尻の穴にあたったような・・・)
事実を確認する前に、べろっ。行為はエスカレート。
触れたのはトパーズの唇であり、続けて舌で菊門を舐め上げられ、ヒスイは総毛立った。
(なんで!?なんでこうなるの!?)
第2次パニックだ。
(だって猫だよっ!?普通猫にこんなことする!?)
これはまさしく、獣姦の構図。
(トパーズってまさかそういう趣味・・・あっ・・・ん・・・ん〜!!!)
今にも門が破られてしまいそうだ。子猫の体では逃げるに逃げられず。
にやぁぁぁ〜・・・ヒスイは弱々しく鳴いた。
(おぁぁぁ!!母上ぇぇぇ!!!)
バスルームから尾行を続けていたシトリン。
(い・・・いかん・・・兄上にはバレてる。しかし・・・)
お楽しみの邪魔をしたら・・・あとが怖い。
(いや、そんなことを言っている場合では・・・)
ヒスイの身を案じながらも、激しい葛藤で動けず。
再びこちら、ベッドの上のトパーズとヒスイ。
「にぁ〜・・・ぁぁ〜・・・」
子猫の鳴き声が部屋に響く。
「にゃ・・・ぅ・・・」
(も・・・やめ・・・)
ヒスイが必死に訴える。すると。
「あいつ以外の男にケツの穴を舐められる気分はどうだ?ヒスイ」
トパーズが言った。
「!!!」
(もしかして最初からバレて・・・)
名前を呼ばれて、気付くヒスイ。
慌てて逃げ出そうとしたが、尻尾を掴まれ、引き戻され。菊門を今度は指で触られた。
ぐりぐり、指の腹で刺激を受ける。
「にゃっ!!にゃぁぁ〜・・・」
(な・・・なんかお尻が・・・へん・・・)
「やめろ!!兄上!!」
そこでやっとシトリンが止めに入った。
「母上は今子猫なんだぞ!!そんなに尻の穴を弄ったら催してしまうではないか!!」と、猫の姿のまま叫ぶ。
「えっ?そうなの?」と、ヒスイ。
トパーズはヒスイから手を離し、ククク・・・笑いながら煙草に火をつけた。
「あいつに嫌気が差したら来い。いつでも飼ってやる」
「・・・すまん。私が猫に〜などと言い出したばかりに」
ジストに精液を浴びせられ。トパーズにアナルを蹂躙され。
「別に・・・シトリンが謝ることじゃ・・・」
「あの家は飢えた雄の巣窟だ。猫でも危険だということがよくわかった」
シトリンは後ろ足2本で立ち、前足を腕のように組んで言った。
「お詫びと言っては何だが、どうだ?気分転換に。猫の世界を案内するぞ」
モルダバイト城下。
ヒスイはシトリンのあとをついて歩いていた。
猫ならではの、しなやかな体。なめらかな動き。
前を歩くシトリンのしっぽを見ていると、無性にじゃれつきたくなる。が。
塀の上を歩くとなると、そんなことを考えている余裕もない。
ヒスイはぎこちない足取りで塀の上を進んだ。
途中で出会った猫達は皆シトリンを「ボス」と呼び。
独眼の黒猫や、丸々太ったペルシャ猫・・・野良から飼い猫まで顔見知り。
猫達の溜まり場となっている裏路地を通ると・・・
「ボス、可愛い子連れてるね」
ニューフェイスのヒスイに目を付けた雄猫がわらわらと寄ってきた。
そこからはもうナンパの嵐で。
子猫にも関わらず、しきりにワンナイトラブ=交尾のお誘いを受けるヒスイ。
そこでシトリンが。
「ナリは小さいが、私の母だぞ!おい、そこ!色目を使うな!!」と、厳重注意。
「母?」雄猫達は半信半疑・・・というより理解不能に近い様子だったが。
「へいへい」「わ〜った、わ〜った」ボスには逆らわない。
「だったら今度ボスが相手してくれよ」一匹の勇気ある雄猫がこう食い下がると。
シトリンは「私に勝ってから言え」とスルー。雌猫歴が長いだけに、雄猫を捌き慣れている。
こうして無事に裏路地を抜け、母娘の城下町散策は続いた。
目に映るすべてのものがヒスイにとって非日常であり、興味を惹かれるまま、あっちに行ったり、こっちに行ったり、道草しながら。
「母上、そろそろ腹が減っただろう。ちょっと寄っていかんか?」
シトリンが鼻で指したのは、高台に建つアパートの2階。
「ここはな、キャットフードをくれるんだ」
と、おやつ処としている家のひとつにヒスイを連れて行った。
植木鉢の並ぶ狭いベランダに下りると、にぁー・・・ひと声鳴き、カリカリ・・・窓を掻く。
すぐに人の良さそうな老婆が出てきた。
「うまいぞ。さすがに城では食えんからな」
与えられたキャットフードをガツガツ食べるシトリン。
子猫のヒスイはミルクをご馳走になった。普段口にしているものに比べれば、薄い味のするミルクだったが、お腹は充分満たされた。
「裕福な家ではないのだが・・・立ち寄るとああしてご馳走してくれる。それが嬉しくてな」
一日の大半を猫の姿で過ごすシトリン。
煙突のある隣の家の屋根に移り、町を見下ろしながら言った。
「こうしているとな、人間の善意や悪意がよく見える」
「人は人の前で、本音を偽り、建前を口にすることも多い。だが、人間の言葉を持たぬ我々猫に建前を言う者などいないだろう」
だからこそ、人間の本質を知ることができるのだと。
「猫嫌いの者、無関心の者、中には虐げる者もいるが、大抵の人間は良くしてくれる。人間の善意・・・私はそれを日々感じていたい」
そのための放浪と、物乞い。
「行く先々であんなに食べてたら、太るよ」と、ヒスイは笑いながら。
「でもね、シトリンの言う人間の善意や悪意って、国の情勢にも関わるものだから、それを身近で確かめるのはいいことだと思うよ・・・て、どうしたの?」
「あ・・・いや」
めずらしくヒスイがまともなことを言ったので、シトリンは少々驚いていた。
(男に組み敷かれて、あんあん言ってるイメージしかないからな、母上は・・・)
そんなシトリンをよそに、ヒスイは話を続けた。
「私は、全然いい王妃じゃなかったけど※失踪してばかり。シトリンなら安心だね」
「母上・・・」
「あ、猫なのに難しい話しちゃった」と、ヒスイ。
「ふ・・・そうだな。猫は猫らしくいこう」
時刻は午後3時。
「あ、私そろそろ・・・」
おやつとコハクが恋しくなる時間、だが。
「まあそう言うな!」
と、聞く耳持たずのシトリン。
国立公園の公衆トイレで元の姿に戻ってから、人型に変身したシトリンに連れられ、中央広場噴水前のベンチに座る。
「ここで待ち合わせをしている」
「待ち合わせ?誰と?」ヒスイがそう尋ねたところで。
「やっほ〜!お股せ〜!」現れたのはアクアだ。
「・・・お待たせ、だよ」
ヒスイはまず漢字の間違いを訂正。それから不思議そうな顔で。
「どうしたの?アクアまで」
実は・・・
トパーズとジストが同時に家を出たことで、ヒスイが寂しがっているのではないかと娘達も心配し、ヒスイを元気づけようと今日という日を計画したのだ。
が、周りが思うほどヒスイは落ち込んでいない。故に温度差が生じる。
「ベジタブルスイーツのお店見つけたからぁ〜、そこでお茶しよ〜よ」
「おお!それはいいな!行くぞ!母上!」
両脇を固められ、引き摺られていくヒスイ・・・
「え・・・ちょっ・・・私、おやつは家で・・・」
「パパにはぁ〜、了解とってきたよぉ〜」アクアがピースを決め。
「こんな時ぐらい親孝行させてくれ!」シトリンが畳み掛ける。
「はぁ???」(親孝行???なんで???)
ヒスイは益々腑に落ちないという顔で。
「親孝行って・・・私、そんなに感謝されるようなことした覚えないんだけど」
「何を言う!我らに命を与えてくれた!それだけで尊ぶべき存在であろう!」と、シトリンは声高らかに。
「だよね〜」アクアが頷く。
ヒスイは真っ赤になり。
「わ・・・私は別に・・・お兄ちゃんとえっちしただけだもん」
「育ててくれたではないか、腹の中で」シトリンが言うと。
「だよね〜」と、またアクアが相槌を打った。
「・・・・・・・・・」
恥ずかしくて、何も言えない。
ヒスイは赤い顔のまま、しばらく俯いていた・・・が。
「・・・親孝行ならお兄ちゃんにしてあげて」
と、口にした。すると。姉妹は顔を見合わせ、内緒話・・・
妹アクアの提案に、姉シトリンが賛成し、可決。
「じゃあ〜、先にお買いものしよ〜!」
モルダバイト繁華街。
「・・・で、なんでここなの???」
3人が入ったのは、ランジェリーショップだった。
「夜になったらわかるよぉ〜」と、アクア。
ヒスイにピンク+黒フリルのベビードールを試着させ、そのままお買い上げ。
ところが。ヒスイが試着室から出ると。
「バイト代出たからぁ〜、アクアが払うよぉ〜」
「いや!ここは姉の私がだな・・・」
レジで姉妹が揉めていた。
「・・・・・・」
(何やってるんだろ・・・あのふたり・・・)
外見がコハク似のシトリンと内面がコハク似のアクア。
(ふたり足したら、お兄ちゃん・・・)
想像して、ぷぷぷ・・・笑うヒスイ。
財布を出して睨み合う二人を見て、また笑う。
(こういうのって、ちょっと楽しいかも)
「・・・・・・」
今日一日を振り返りながら、お腹に両手をあてる。
想うのは、奥に植えられた種のこと。
(男の子でも女の子でも、どっちでもいいけど)
子供の性別は正直あまり気にしていない。
(だけど・・・ほんのちょっとだけ・・・女の子だったらいいな、って思っちゃった)
その夜・・・赤い屋根の屋敷。
「ヒスイ、それ・・・」
「うん、シトリンとアクアが買ってくれたの」
※最終的に合同出資となりました。
ロマンティックなピンクのベビードール。嬉しいことにTバックとセットになっている。
(か・・・可愛いぃぃぃぃ〜!!!!)
心の中で萌え叫ぶコハク。
(どうしてくれよう!!この可愛さ!!)
下心、爆発寸前。平静を装うのもひと苦労だ。
「ヒスイ、ちょっと後ろ向いてみてくれる?」
「うん?こう?お兄ちゃん」
「そうそう・・・」
ヒスイに後ろを向かせ、お尻の“T”を確認。
黒のフリルがバックスタイルを華やかに彩っている。
ラッピングされた白桃は、それはそれは甘そうで。
「・・・・・・」
極上のエロスに息を飲むコハク。
どこから責めるか考えているうちに、完全勃起だ。
(シトリン、アクア、ありがとう・・・っ!)
娘達の贈り物。
コハクにとって、素晴らしい親孝行となったのは、言うまでも・・・ない。
WorldJoker 第2章<終>
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願わくば、世界の終わり。
バーチャル王子の花嫁候補
TEAM ROSE
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